Columnコラム
微生物試験・防腐効力試験を省略できる製品とは?
台湾PIFにおける低リスク製品の条件

台湾PIFでは、微生物試験(第12項)と防腐効力試験(第13項)を、微生物リスクの低い製品について省略できます。TFDAの製作指引はISO 29621を参照しており、pHが3以下または10以上、水を含まない、アルコール20%以上、充填温度65℃以上などが目安です。ただし「条件に当てはまれば自動的に省略」ではなく、安全性評価者が製品ごとに判断し、その理由を第16項に記載する必要があります。
省略できる根拠
「化粧品產品資訊檔案管理辦法」第3条第5項は、安定性試験(第11項)、微生物試験(第12項)、防腐効力試験(第13項)について、安全性評価者が製品の属性や特性から評価し、第16項「製品安全資料」に理由を記載した場合に省略できると定めています。
TFDAの「化粧品產品資訊檔案製作指引」は、微生物への感受性から製品を次の3つに分け、低リスク製品では微生物試験と防腐効力試験の両方を不要としています。
| 区分 | 製品の例 | 微生物試験 | 防腐効力試験 |
|---|---|---|---|
| 微生物リスクの低い製品 | アルコール20%以上、有機溶剤が多い、pHが極端に高い・低い製品など | 省略できる | 省略できる |
| 使い切り・開封しない容器の製品 | 使用中に内容物が空気に触れない容器など | 必要 | 製品ごとに判断 |
| 上記以外の製品 | 一般的な水系のスキンケア、メイクアップなど | 必要 | 必要 |
低リスク製品の10の条件(ISO 29621)
製作指引は、低リスク製品の判断にISO 29621:2017を参照するよう求め、次の評価要因を例示しています。処方の主成分が次のいずれかに当てはまる製品は、微生物が増殖しにくいと考えられます。
| 評価要因 | 条件 | 製品の例 |
|---|---|---|
| pH(酸性) | 3.0以下 | グリコール酸を配合したピーリング製品 |
| pH(アルカリ性) | 10.0以上 | 縮毛矯正剤 |
| 無水製品 | 水を含まない | ボディオイル、アイブロウペンシル |
| エタノールなどのアルコール | 20%以上 | ヘアスプレー、香水 |
| 充填温度 | 65℃以上 | リップスティック、口紅、クリームチーク |
| 水分活性(aw) | 0.75以下 | — |
| 極性有機溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチルなど) | 10%超 | ネイルエナメル、除光液 |
| アルカリ性化合物 | アンモニア0.5%以上、モノエタノールアミン1%以上 | ヘアカラー、パーマ剤 |
| アルミニウムクロロハイドレートとその塩 | 25%以上 | 制汗デオドラント |
| 過酸化水素 | 3%以上 | ヘアブリーチ、パーマ剤 |
日本から台湾に輸出される製品でいえば、香水やヘアスプレー(アルコール)、口紅やリップクリーム(充填温度)、ボディオイルやバーム(無水)、ネイルエナメル(有機溶剤)、ヘアカラー(アルカリ性・過酸化水素)などが、この条件に当たる可能性があります。
条件に当てはまっても、確認が必要なこと
判断するのは安全性評価者
省略は、安全性評価者が製品の属性を評価し、理由を第16項に記載してはじめて認められます。製作指引も、安全性評価者が試験を行うべきと判断した場合は試験が必要だとしています。「日本で問題なく売れている」「同じ種類の製品は省略している」という理由では足りません。
境界に近い処方
アルコール濃度や水分活性が条件の境界に近い製品、油性成分の中に水相を含む製品、使用中に水が混入しやすい製品などは、条件に当てはまるように見えても、試験を行うほうが安全な場合があります。
原料の微生物管理
製作指引は、製品の試験とは別に、水溶性の混合物、タンパク質を多く含む原料、動植物由来の原料など、微生物が増えやすい原料については微生物規格を設けるよう求めています。一方、有機溶剤を多く含む原料は微生物試験が不要とされています。
使い切り容器・エアレス容器
使用中に内容物が空気に触れない容器や使い切りの製品は、製作指引の区分では「微生物試験は必要」とされています。容器の仕様だけで防腐効力試験を省略できるかは、製品ごとに判断します。
日本側で用意していただきたいデータ
低リスクに当たるかどうかは、処方と製造条件のデータがあれば判断できます。次の情報があれば、試験を手配する前に見通しをお伝えできます。
- 製品のpH(製品規格書に記載されていることが多い)
- 水とアルコールの配合量(全成分と配合量からわかります)
- 充填温度(製造工程の情報)
- 水分活性(測定している場合)
- 容器の仕様(エアレス、使い切りなど)
微生物試験と防腐効力試験の2つを省略できれば、試験費用と、防腐効力試験に必要な約4週間の試験期間を抑えられます。逆に、条件に当てはまらない製品で試験が不足していると、査察の前に追加の試験が必要になります。
省略できない場合に求められる試験
微生物試験は、台湾の「化粧品微生物容許量基準表」の5項目(生菌数、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス)に対応している必要があります。項目と基準値は16項目と必要書類にまとめています。
防腐効力試験は、ISO 11930、TFDAの「化粧品防腐效能試験指引」(2021年)、USP〈51〉、欧州薬局方5.1.3などの方法で実施し、報告書に方法と判定基準を明記します。日本で実施済みの報告書が使えるかどうかは、日本の試験データは台湾PIFに使える?で解説しています。
まとめ
微生物試験と防腐効力試験は、低リスク製品であれば省略できますが、その判断と理由の記載は安全性評価者の責任です。処方のpH、水とアルコールの配合量、充填温度、容器の仕様がわかれば、試験を手配する前に省略できるかどうかをお伝えできます。
出典:化粧品產品資訊檔案管理辦法 第3条、TFDA「化粧品產品資訊檔案製作指引」(2023年10月)、化粧品微生物容許量基準表修正規定(2022年1月1日施行)、ISO 29621:2017 Cosmetics — Microbiology — Guidelines for the risk assessment and identification of microbiologically low-risk products